本日は、海洋研究開発機構横浜研究所の一般公開へ。自転車で行こうと思っていましたが、朝が遅くなってしまったため、断念。電車でも一時間半かかる道のりでした。
南海トラフ地震発生帯掘削計画は、プレートの境目の土(?)を直接採集したり、その場所にかかる力を測定して、どのような具体的な条件が揃えば地震が起き(たりす)るのか、調べるそうで。特に、大地震の震源となる可能性が高いと考えられている南海トラフを調査対象にしている、というわけですね。とても重要なところについては重点的に掘削しつつ、掘削しなくても音波(?)の反響の度合いによってプレートの状態を計測する方法もあるそうなので、そちらの手法もより高度化できるとよいですね。
沖縄熱水海底下生命圏掘削は、地下深いところに生息する未知の生命体を発見し、研究するということで。しかし、その生命体をどのように解析するのかと思いきや、当然地下深くの環境をそのまま実験室へ持ってくることはできないため、かなり限られた情報にはなってしまうようですね。しかしそれでも、その環境変化による影響を最小限にするために、引き上げてすぐの海上で各種解析を行うということで。できるのかどうかわかりませんが、地下深くの環境を再現する、というのも、また一つ別な面白い挑戦かも知れません。
驚いたのは、IODP(統合国際深海掘削計画)自体の枠組みです。国際研究プロジェクトとして、各国から拠出金を集め、資源配分をしているそうで。これって、深海掘削という一つの領域に特化しているものの、その分野の中では、CSTP(総合科学技術会議)の親玉のような役割を果たしているのでは。しかも、国際的にも、日米欧の三極で競っている、とか、そこに中韓が迫っている、とか、今や中国の方が有力だ、とか、そんな話は聞くことがある気がしますが、各国が協力して一つの大きなプロジェクトを進めている、というのは、科学技術関係では、あまり聞かない気がします。ほかに思い当たるのは、国際がんゲノムコンソーシアムなどでしょうか。いずれにしても、科学技術の分野でも、それ以外でも、多国間協力の目指すべき姿なのではないかと思いますし、そうであってほしいと思います。
国際協力という意味では、ちきゅうは、マントルへの到達という目標に関しても、世界の期待を一身に受けてプロジェクトを進める立場にある、ということですね。社会一般的な傾向としてだけでなく、研究者の世界でも内向き志向に対する指摘が聞かれる中で、世界の先頭を切ってプロジェクトを進められる立場にある、というのは素晴らしいことです。ぜひ世界の英知を結集し、それらを束ねる国際プロジェクトを率いるノウハウ・経験値を各分野に還元できればよいと思います。
地球シミュレータも、見学させてもらいました。
最近、フーリエ変換に関する指標で世界最高速を達成したということでしたが、現在稼動している機種(SX-9)は既にNECから市販されている製品ということなので、その集積の大きさと性能を最大限引き出す周辺技術がモノを言ったということですね。気候変動シミュレーションなどと合わせ、ベクトル型が得意とする種類の計算だということのようですが、最先端(の一つ)が市販品の集積である、というのは何を意味するのでしょうか。生命科学で言うところの、次世代シーケンサーのような位置付けでしょうか。その規模の大きさに相関して、共有する単位も大きくなる、と。
そのほか、リモートセンシングに関する研究のお話も伺いました。改めて感じたのは、研究機関が一法人として独立しているからには、アイデンティティが大事なのではないか、ということです。平成22年10月18日に公表された第四期科学技術基本計画案にも研究機関(中略)など、我が国の科学技術それ自体を文化として育む
という記載があります。単に研究領域が法人間で重複している、ということであれば、より優れた(将来性の高い)方が実施するように資源配分すればよいし、本当に重要な領域であれば、そもそも同時並行的に資源を投入することも必要でしょう。しかし、組織が組織としてよりよく機能していくためには、自らはどのような組織なのか、という自己定義がなされていることが必要なのではないか、と思ったわけです。JAMSTECについては、名称からすれば、海洋がアイデンティティなのでは、と思います。しかし実際には、陸上のリモートセンシングのような研究を行っている一方で、深海ではない通常の深さの海域の生物に関する研究などは、あまり行われていないようです。アイデンティティはむしろ地球科学にある、という話もありましたが、いずれにしても、明確になるとよいと思います。
アイデンティティについては、理化学研究所との対照についても、興味深いところです。アイデンティティがはっきりしない、というのは、むしろ理化学研究所についてより強く言えることで。比較すると、JAMSTECがよりマクロな現象を扱おうとしているのに対し、理化学研究所は、よりミクロ、つまり、より細かいもの、より短い時間の事象を扱おうとしている傾向が強いような気がします。これだけでは現場の感覚とはまだ離れているとは思いますが、いずれにせよ何らかの形でアイデンティティを整理し、その核となる部分については日本の第一人者(機関)となるとともに、世界でも競争力があることが求められ、各アイデンティティの境界の領域ではそれぞれ競争しつつ協力することでポテンシャルを最大化していくことが各機関に望まれるのではないかと思いました。
0 件のコメント:
コメントを投稿