2008-10-13

敬称

ゼミの発表資料で、取材調査に協力して下さった方の名前を紹介しようと思って、ふと立ち止まりました。敬称は、何と書くべきなんだろうか。

ウェブ検索をして、最初に目に留まった記事は、ジェンダーの盲点。敬称としてのさんの違いは、隠れた階級差別を反映するものだという。つまり、その(少なくとも)二段階の階級を定義する要素が、典型的な男性像・女性像のそれぞれの要素と重なるため、ジェンダー差別に近い状態になっている、ということなのかな。

「さん」と「氏」の奇妙な使い分けは、その階級についてもっと掘り下げようとしているようです。企業経営や公務などにかかわる公的な(かしこまった)立場を持って社会生活を送っている人間第一ランク私的・情緒的な世界に生きている人間第二ランクと意識されることが多いと論じています。女性は「去勢」された存在も、同様の立場で書かれた記事と考えられます。

また、女性に「氏」教えて!goo)では、上記記事で批判的に分析されている立場に基づく意見が見られるほか、女史という言葉についても触れられています。

さんの使い分けが、本来的に公人私人のような区別であるなら、それらの言葉の使い分けには、問題はない気がします。但し、その判断をするに当って、ジェンダーの要素は排除しようということですね。ただ、殊今回自分が直面している文脈では、公人的な人と私人的な人を同列に扱う可能性があり、その場合、同列なはずの両者の扱いに差があるとしたら、違和感があります。

そもそも、敬語というものは情緒的・感情的なものであるのに対して調査研究は情緒・感情を極力排除したものとも言える気がします。それならそうで、調査研究の文脈では敬語など全く使わなければすっきりする、とも言えますが、調査研究と言えども、必ず何らかの形で社会的な関係性の中に位置づけられており、そこから逃げることはできないのも、また確か。これは、調査研究を行う上での、大いなる矛盾と言えるような気もします。

0 件のコメント: